2019年くるみ割り人形国際コンクール 吉村妃鞠
ポップスやロックはよく聴きますが、クラシックはほとんど聴きません。
しかし、たまたま聴いた「2019年くるみ割り人形国際コンクール」で吉村妃鞠が演奏したサラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」は感動的でした。
このとき8歳か9歳の吉村妃鞠の演奏で、サラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」がこんなにいい曲だったのかと、あらためて見直しました。
サラサーテはスペイン出身だそうですが、「ツィゴイネルワイゼン」は南欧よりも、寧ろ東欧の雰囲気、たとえばブラームスの多くの楽曲から感じられるもの、東欧という土地と一体になった民族の喜びと悲しみのようなものを感じさせます。
吉村妃鞠の演奏には、膨大な時間をかけた練習の積み重ねによる自信の裏打ちがあるためなのでしょうが、演奏に比類のないテクニックと思い切りの良さ、大胆なメリハリ、感情の表現があり、彼女が8歳という年齢でこのようなことを実現しているということとあいまって、彼女の高い評価に繋がっているように思われます。
特に感情の表現という面では、初期の辻井伸行が演奏する「ラ・カンパネラ」もそうですが、原作者が楽曲に込めた情念、希求や諦念、愛や憎しみといった人間の生々しい情動が的確に表現され、それが審査員や観客の胸に、比類のない感動を惹き起こしたのではないかと思います。
優れた技量を持つ演奏家たちは、世の中に沢山います。しかし音楽は、多分ほかの分野でもそうだと思いますが、それだけでは十分ではないということです。
天才の誉の高いヤッシャ・ハイフェッツが演奏する「ツィゴイネルワイゼン」と聴き比べてみましたが、吉村妃鞠が演奏する「ツィゴイネルワイゼン」は、演奏の技量、感情の表現などの点において、決して引けを取ってはいないように感じられました。
「2019年くるみ割り人形国際コンクール」
吉村妃鞠 サラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」